19 May, 2019

19J Japan Trek

19JのDajiliです。遅くなりましたが、2月27日〜3月3日にかけて実施したJapan Trekにつき、本ブログにて報告いたします。

Japan Trekというのは、INSEAD生に日本を理解してもらうことを目的に、INSEAD日本人学生の有志によって企画される一週間のプログラムです。当ブログの記事にもある通り、今回が初めてではなく、過去何代にも渡り企画されています。Class of July 2019 については、Period 3からPeriod 4の期間に、一週間に渡るTrekを実施いたしました。

INSEADにおいて、我々学生が普段口にする「Trek」には大きく分けて三つのタイプがあります。一つ目は、MBAプログラム即ち学校がオフィシャルに主催するTrekで、選択科目として履修することになり、参加すれば単位がもらえるというものです。内容としては、純粋な企業訪問のTrekもあれば、観光・企業訪問の双方を織り交ぜたTrekがあります。Class of July 2019では、シリコンバレー・イスラエル・中国・インド・ドバイ等が開講されていました。二つ目は、INSEADのClubが主催するTrekで、「地域×セクター」という二つの切り口に基づき、それぞれのClubが企業訪問をセッティングするというものです。単位はとれませんが、特定の分野にフォーカスしたTrekになり、よって必然的に就活色が強くなりますので、その分野に興味のある学生にとっては非常に費用対効果の高いTrekになっています。私が把握しているもので、「ロンドン×金融」「アムステルダム×起業」「香港×PEVC」「ジャカルタ×テック」などが企画されており、私もこれらいくつかのTrekに参加しました。そして最後に、学生の有志が主催するTrekがあります。これはある国の出身の学生が、その国の文化を知ってもらおうと主催するもので、今回のJapan Trekはこれに当たります。企業訪問よりも文化体験の方が色濃くなるのがこのTrekの特徴で、我々の代では、日本のほかレバノン・イスラエル・ブラジル等が企画されています。このTrekとは何ぞやを説明するだけでも、INSEADの多様性の度合いがご理解いただけるかと思います。

今回のTrekでは、計22名が参加いたしました。この休み期間には、Japan Trek以外にTrek企画が多く、中国・香港・イスラエル・ドバイ・南アフリカ・ニューヨークと目白押し。合計500人いる学生がそれぞれの興味関心を元に様々なTrekへと旅立っていきました。そんなTrek競合(?)ひしめく中においても、日本に対する興味関心は高く、多くの学生に参加してもらいました。そしてその出身もバラバラ。アメリカ・中国・スイス・ドイツ・ウルグアイ・ブラジル・スペイン・フランス等、様々な国籍の学生が集まり、INSEADらしいプロファイルとなりました。

今回は、大阪・京都・箱根・東京を回る一週間の旅程を組みました。参加者の中には、日本が初めてという学生もいれば、自他共に認める「日本通」の学生も含まれていたので、アレンジに苦労いたしました。ただ、そこは自己主張の強い(笑)INSEAD生。多くの人から、「ここがいきたい」という要望があったので、それに応えつつフレキシブルな旅程を組み、結果としてかなり満足度が高いTrekになったかと有志一同自負しています。以下は旅程と、その内容となります。
① 1日目:大阪
大阪駅にて集合したのち、大阪城およびあべのハルカスを見学。大阪城では江戸の歴史について質問を受け、必死に説明しました笑 あべのハルカスからは関西一帯が一望でき、「大阪ってこんなに大きかったのか」と驚く学生が多数でした。

②2-3日目:京都(定番旅行地、および文化体験)
大阪の次は京都にて二日間滞在。伏見稲荷・金閣寺といった定番の観光地を訪問するほか、茶道や保津川下りなどアクティビティ・文化体験も織り交ぜました。特に茶道については、様々な所作について多くの質問が飛び交い、まるで教室に戻ったような雰囲気となりました笑 

③4日目:箱根
京都の次は箱根および小田原。小田原城を見学したのち、箱根にて宿泊。浴衣・温泉・卓球という温泉文化を体験してもらいました。浴衣はおろか、日本の温泉に入ったことがない学生が多数いたので、まずお湯の色が違うことから大興奮。卓球も主催者の予想を超える盛り上がりぶりで、30歳前後の大人が(注:INSEAD MBAの入学時平均年齢は29歳)大盛り上がりしていました。ここはさすが「Work hard, Play hard」を掲げるINSEADの面目躍如といったところでしょうか。

④5-6日目:東京(定番旅行地および展示会等)
最後は東京。基本的には自由行動という形で、東京タワーや浅草などの定番観光地に訪問したり、美術館に行ったりと様々な活動を行いました。





このような形で一週間ありとあらゆるアクティビティを楽しんでもらいましたが、同級生のRisk Appetiteには終始驚かされました。特に食事について、日本には食事や飲み物の種類も多種多様で、時には翻訳者泣かしとも言えるような凝ったものを発見して来ましたが、翻訳するやいなや「ぜひ試したい」と手をあげる学生が多数。皆非常に好奇心が強く、何でも試してみるというスタンスだったのを覚えています。

また、一週間を通じて終始印象的だったのが、学生の日本の文化面に対する興味関心の強さと、ビジネスに対する興味関心の度合いにおける温度差です。今回Trekを通じ、同級生から多くの質問を受けました。ただし質問の多くは、観光のメインである歴史的建造物や、食事やアート等の文化面がメインとなる一方で、ビジネス面での興味はそこまでなかったように思います。

確かに、今回のTrekを通じて、日本という土地が持つ観光資源の多さを改めて感じました。季節も春夏秋冬それぞれの楽しみ方があるという点ではオールシーズン対応可能ですし、食事も多様性に満ち溢れています。さらに、朝から晩まで、とにかく何かしら楽しめるアクティビティが、いつでもどこでも用意されています。こんな国は世界中探してもなかなか見当たらないのかなと思います。INSEADにきて、休みを見つけてはヨーロッパからアジアまで全領域に旅行に行っていますが、多くの国が、史跡が少ない、シーズンが短い、あるいは食事が多様性に乏しいなどのマイナス点を持っています。そうした世界の国々においても、日本というのは観光資源の豊富さと言う点で非常に稀有な存在なのではないか、と今回感じました。

こうしたインバウンド需要のさらなる可能性を感じる一方で、学生から見て日本がビジネスとしての魅力に欠けるというのも痛感しました。今回Trekで議論したビジネス面での話といえば、「日本の企業の勤務時間は本当に長いのか」ぐらいだったかと記憶しています。INSEADの学生から見ても、日本というのは「市場は大きいけど、日本語という障壁に加え、文化・商習慣の違いがあるので、働きづらい」と捉えられており、日本以外のINSEAD生にとって、卒業後のキャリアを築く場所として日本はまず選択肢に上がらないのが現状です。

よくよく振り返ると、INSEADの授業の中でもその傾向を垣間見ることができました。例えば授業で扱われるケース・スタディの事例の中に、日本に関するものは、ビジネスそのものが取り上げられるというよりは、「日本から来たコンサルタントが欧米の商習慣とは全く異なるアプローチで対応して来た」といった、文化の違いをややネガティブに強調するような形での出現が多いような印象を受けます。それが、日本に対するビジネス面での興味関心の薄さに拍車をかけているように思えます。勿論、ケース・スタディに取り上げられている内容が絶対的な基準にはなり得ませんし、個々人の選択科目によって行うケース・スタディが異なるため、このように結論づけるのは尚早かもしれませんが、日本の相対的な位置付けを改めて感じた格好となりました。

少しネガティブな内容が続きましたが、総じてこのTrekに参加した学生からの反響はとてもよく、とても意義のあるTrekになったと自負しております。Trek終了後にも学内で口コミが広まり、「Japan Trekの写真見たけど、他のTrekに行ってしまいあの素晴らしいイベントに行けなかったのをとても後悔している、またやってほしい」という声もありました。また、Japan Trekに参加したブラジル人学生が、「自分の国でも同様のことをやる」といって、新しくBrazil Trekを企画してくれています。「誰もが(=どの国も)マイノリティ」というフレーズで多様性を謳うINSEADの中にあって、このTrekが日本の存在感を維持ないしは高めたことに繋がれば、これほど嬉しいことはありません。

*Japan Trekの開催にあたっては、今回も以下多くのスポンサーの方々にご支援いただきました。この場を借りて御礼を申し上げます。(日本語読み五十音順)
Adam Markus
Affinity英語学院
アンテロープキャリアコンサルティング株式会社

INSEAD Alumni Association in Japan
江戸義塾株式会社
株式会社アクシアム
株式会社アゴス・ジャパン
キャリアインキュベーション株式会社
Jessica King
ボストン コンサルティング グループ