04 January, 2018

グラミン銀行でのインターン~冬休みの過ごし方~

18Jのまっきーです。冬休みにバングラデシュのマイクロクレジット機関であるグラミン銀行で2週間のインターン(とはいえ、働くわけではなく研修のような形になります)をしてきたので、その紹介をさせていただきます。

0、 グラミン銀行とは
2006年にノーベル平和賞を受賞したムハマドユヌス氏がバングラデシュの農村で1976年に始めたマイクロクレジットのパイロットプロジェクトから始まった機関であり、1983年に銀行として成立しています。従来、担保がないことから市中の銀行にアプローチができなかった農村の最貧困層をターゲットとして、無担保で個人向けの貸付を行っています。メンバーの95%以上は女性であり、女性のエンパワーメントにも大きな役割を果たしているとされています。以下のURLからアニュアルレポートを見ることができます。
http://www.grameen.com/annual-report-1983-2016/



1、 事前準備
グラミン銀行では教育機関からのインターンシップを常時受け入れています。詳細は以下のURLを参照。
http://www.grameen.com/training-programs/internship/

私は大学時代からマイクロクレジットに関心があったことと、バングラデシュに行ってみたかったので、この冬休みに行くことにしました。期間は1週間から受け入れているようですが、最初の1週間はほとんどグラミン銀行に関する説明等で終わってしまうので、最低でも2週間は取ったほうが良いと感じました。基本的にはインターンの中身は実際に渡航してからコーディネーターと相談して決めるような形となりますので、事前にすることはあまりありませんが、グラミン銀行に関する本を読んで最低限の知識を得ておくことは必要です。また宿泊先については、グラミン銀行に相談すると紹介してもらえますが、2017年12月現在ではGrand Prince Hotel(Mirpur Road 1)が使われています。グラミン銀行からも徒歩10分、朝食込みでUSD17(wifi付き)と格安なのでここを使うのが無難でしょう。外国人がよく泊まるエリアだとGlshanエリアが有名で治安的にも良好ですが、グラミン銀行からは遠いのが難点です。ダッカは交通渋滞が凄く、15km程度の移動でも混んでいる時には2時間程度かかることがあるので、なるべく近くに拠点を構えるのが望ましいと感じました。

2、 当日
インターン期間中は10時30分~18時までグラミン銀行での研修となります(農村部に行くときなどは早朝に出発することもあります。)。グラミン銀行では常時インターンを受け入れているので、私が行った時もローカルの大学生が15名程度、日本人のMBAの学生が2名、中国人とブラジル人の学生が各1名参加していました。

私の場合は2週間のコースだったため、最初の1週間はグラミン銀行の業務、プロダクト等に関する研修を受けた後、最後の日に農村部に行って実際の住民の方とお話させていただきました。2週目はグラミン銀行のグループ会社を訪問した他、農村にもう一度行ってきました。

(訪問したグループ会社)
・Grameen Knitwear(海外輸出向けにOEMでTシャツなどを製造)
・Grameen Veolia(フランスのVeoliaとのJVで、浄水プラント等を設置して、地域の村の住民に飲料水を提供)
・Grameen Shikka(教育機能、スラムスクールや職業訓練学校などを運営)
・Grameen Distribution(商社機能)
・Grameen Shakti(農村に電気を供給するため、家庭向けの太陽光パネルなどを販売)
・Yunus Center(バングラデシュのアントレプレナーとインベスターをマッチングするインキュベーション機関)

3、 感想
2週間という短い期間で感じたことではありますが、グラミン銀行の仕組みは総じて良くできているなと感じました。日本でよく取り上げられるのは、5人の共同体を作ってグループ内での支え合いやピアプレッシャーによって返済率を上げるという点ですが、それ以上に週次のグループミーティングを通した村全体での支え合いやグラミン銀行の職員が頻繁に村に行くことにより色々な相談ができる環境が作られていることが大きいなと感じました。グラミン銀行の利用者は現在900万人程度ですが、14万のセンター(村に設置されており、週次でグラミン銀行の職員とそのセンターに所属する利用者が全て集まる)、2500を超える支店によりカバーされています。「村に行く銀行」ということで人件費や燃料費など相当なオペレーティングコストがかかっていますが、それが高い返済率につながっているのだろうと感じました。村人に話を聞いたところでも、グラミン銀行のおかげで事業を始めて生活が改善したという声が多く聞け、マイクロクレジットの意義を感じました。

一方で、インターンをしている中で感じた課題として、①他のマイクロクレジット機関との情報共有が少ない、②グループ会社とのシナジーを活かしきれていない、③借り手に対するビジネス面でのサポートが少ない、といった点を感じました。今回私はそこまで踏み込めなかったですが、既存のローン返済のために他のマイクロクレジット機関からお金を借りて多重債務状態になってしまう例などもあるという話を現地の人から聞きました。とはいえ、グラミン銀行の取り組みは素晴らしいものだと思いますし、課題については今後改善できる点だと思うので、今後にもぜひ期待したいと思いました。

このインターンは、アウトプットを求められないので人によっては退屈かもしれませんが、開発金融などの現場に触れたい人にとっては非常に価値のあるものだと思います。またコーディネータの方は非常にインターンの受け入れに熱心であり、私の「このグループ会社に会いたい」といった要望に対して一つ一つ対応してくれました。冬休みをこのインターンに使って本当に良かったと感じています。


(グラミン銀行ヘッドオフィス農村での写真)

(農村での写真)

(インターン同期生との写真)