P1の全体的な様子は過去記事が既にあります(6月29日付記事ークラスの様子-P1,P2編、HOさん)。必修科目は、各MBA校でそれほど差がないとも言われる部分ですので、以下、各科目の内容と授業の雰囲気が分かるよう印象に残った場面を簡単にご紹介します(フォンテーヌブローキャンパス)。
【Prices & Markets】
ミクロ経済です。ケース教材を読みながら、特定の市場環境の中で、コスト及び収益と生産量のあるべき関係、それが反映されたものとしての価格や生産投資、更に同業他社との製品差別化が進んだ場合や異なる消費性向をもつ顧客層へ消費者が分化している場合はどうなるのか等々。「結局需給曲線に置き換えてばかりで面白くないぜ…」という学生もいましたが、これらストラテジー(P1)やマーケティング(P2)の授業の前提となる市場と企業活動の大原則を、実例や問題を解きながら理解させてくれた授業でした。
なお、学期後半には、寡占市場下で生産量を設定しあい、何ラウンドか経てどのチームが利潤を最大化できたかキャンパス合同で競うゲームが開かれ、勝負に徹した友人が進めた早期談合と最後の裏切り戦略のおかげでクラス一位に輝きました。
【Financial Market Valuation】
コーポ―レートファイナンス其の一です。P2に其の二が行われるので、基本的な内容に終始します。といっても投資銀行やプライベートエクイティ出身の学生も参加しており、プロジェクトや合併企業の価値について、推進役と査定役に分かれて議論しあう数回のプレゼンでは、彼らの質疑応答や判断は実務家の目線を知る上で良い勉強になりました。
【Financial Accounting】
名の通り財務会計です。知識ゼロであることを前提に、仕訳処理を通じて、個々の取引が財務諸表に与える影響を理解し、更にそこから逆算して財務諸表に与える影響を踏まえた取引の選択やデザイン、利益調整(earnings management)及び財務諸表分析を概観する内容でした。
まじめな法律家出身の学生が「この利益調整は私から見ると信義則違反ですが、それをやれと教えているのでしょうか」と教授に質問し、「会計上は問題がないのであなたの選択だが、少なくとも財務諸表の数字の裏にこういった手法が採られ得る可能性を教えている」という教授の切り返しが特に印象的でした。
【Uncertainty, Data & Judgement】
判断形成(Decision-making)の基礎となる統計学や心理学です。最初は心理学で自分たちの判断には各種バイアスやアンカーがかかっていること、特に不確定な事象に対する判断について自信過剰になりがちだという点を実験で突き付けられ、だからこそデータを通じて適正な判断をできるようになろうというコンセプトのもと、基本的な統計学やソフトの使い方を習得する授業でした。毎回のように「君たちはまだover-confidenceだ、Be Geek!」と言われました。
【Organizational Behavior I】
心理学です。より組織に焦点を当てるのがP2、P1ではパーソナリティや認識、モチベーションといった個人の要素に焦点を当てています。例えば、個人の認識にどのようなバイアスや文化的差異が存在するか、グループの中で生じやすい認識の齟齬を極小化する方法、グローバルなチームや反対派が存在する集団を説得するコミュニケーション、モチベーションとフィードバックの在り方等々。
ほぼ毎回ケーススタディを用いたクラス内でのロールプレイや意見の共有があり、想像していたよりも科学的・実践的な内容でした。特に印象に残った帰結として「多様な構成員からなるグループは画一的なグループに比べ作業非効率はあれど、一定の手順やルールを共有すれば、よりクリエイティブな結果を生む。個人のレベルに引き直せば、多様な職務経験や国際経験が独創性をもたらす」。
【Introduction to Strategy】
組織の目標に向けた戦略策定の導入として、設定した問いに対する基本的な分析概念や分析のためのフレームワークを通覧しました。職業上、こういった分析図を扱うことがなかったため、事象を整理する枠組みとして非常に新鮮でしたが、コンサルティング出身のチームメイト評では「こういった分析は初歩的で、企業からすれば周知の内容にとどまるから誰もお金を払わないだろうね」とのこと。
ただ、試験の代わりにグループで戦略分析を行い、一日がかりでプレゼン大会が開かれた際には、チームの議論の収拾がつかなくなり、一次ラウンドで敗退するなど、グローバルかつ多様な職務経験者からなるチームで瞬間的に機能する難しさに直面しました。
以上、P1のコア科目紹介でした!私は入学するまでMBAの授業として実際に何をやるのか、どのような意味があるのか、特に計数以外の科目について不明な部分が多々あったので、受験者の方の参考になれば幸いです。
【写真】学期前の静謐な教室(2017年7月31日撮影)